ビデオゲームとイリンクスのほとり

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まだ「受付嬢」と呼ぶか。モンハンワールドの受付嬢を英語でなんと言うのか?

モンスターハンター』シリーズでは初代から「受付嬢」と呼ばれるキャラクターが登場する。2018年にリリースされた『モンスターハンターワールド(以下、MHW)』でも受付嬢と呼ばれるキャラクターがいる。下記の画像はMHWの公式ページにある登場人物紹介のページである。

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キャラクターの下に説明文があり、「編纂者」という文言もある。これが正式な職業名なのか、「受付嬢」が正式なのかはよく分からない。歴代シリーズのモンスターハンターで「受付嬢」と呼ばれるキャラクターは、ゲーム内でクエストの受注や破棄などを受け付ける係をしていた。MHWでも上記画像の女性キャラクターがその受付係の役割を担っていることから、このキャラクターはモンスターハンターの伝統に則り「受付嬢」と呼ばれているのだろうと考えられる。

この同じキャラクターが北米の公式ページでは次のように表現されている。

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名前は受付嬢ではなく、“The Handler”となっている。この単語にあたるのは日本語では「編纂者」になるのかもしれない。*1。このMHWの受付嬢は歴代シリーズの受付嬢と異なり、ハンティングの現場まで同行しアドバイスなどを実施する。”handler”はボクシングのセコンドを指すこともある単語なので、それをイメージして名付けられているのかもしれない。いずれにしろ、英語では「女性であること」に限定しない名前が付けられている。一方で日本語では、「嬢」という女性を表す言葉を用いている。

 

なお、MHWより前の歴代シリーズで個々の受付嬢たちは英語でなんと呼ばれているかというと”Moga Sweetheart”や”Behrna Gal”や”Guildmarm”などと呼ばれている。”Moga”や”Behrna”は村の名前である*2

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”sweetheart”は女性に限定する表現ではないかもしれないが、”gal”や”marm*3”はそうだろう。また、歴代の受付嬢の職業を指す言葉は、ファン作成のWikiGuild Receptionist | Monster Hunter Wiki | Fandomによると、”Guild Receptionists”や”Guild Girls”と記されている。日本語の場合、コンソール版では「受付嬢」、携帯機(PSP)では「ギルドガールズ」、PCの『モンスターハンターフロンティア』では「ガイド娘」と呼ばれており、一貫して女性であることを示す言葉が採用されている*4。ただ、”Sweetheart”や”Gal”という言い方から、MHWより前の作品では日本語でも英語でも受付係が女性であることは素朴に当たり前の前提とされていたように見える。

 

ところでクエストの受付係が全て女性かと言うと例外が2人だけ存在する。初代『モンスターハンター』のココット村の村長および『モンスターハンター4』の酒場のマスターの2人はクエスト受付係を行う数少ない男性キャラクターである*5

 

繰り返すが、最新作のMHWの受付嬢はこれまでの受付嬢のキャラクターとは大きく異なっている。MHWより前の作品の受付嬢は決して危険な狩りの現場であるフィールドに出向くことはなく、あくまで村の中という安全圏において事務的な受付係をしていた。一方でMHWの受付嬢は、アクティブで危険な現場にも臆することなく出かけるし、いわゆる古臭い「女性らしさ」とは違う印象を与えるキャラクターである*6。これまで日本でのヒットが際立っていたモンハンシリーズを世界市場でヒットさせるために、サポート役の女性キャラクターもグローバルな描き方へとアップデートする必要性があると制作側が認識した結果だろう。結果としてどれだけ「グローバル基準」に合致できたのかは議論の余地が大いにあるところだろうが、歴代シリーズの受付嬢と比べて大きく違うキャラクター描写になっていることは確かである。

 

さて、こうして見てみると、今なお日本語でわざわざ「受付嬢」と呼ぶ必要性がどれだけあるだろうかと思わないではない。その呼び方を「守る」ことでカプコンは日本のモンハンプレイヤーに何かしら伝えたい思いがあるのかもしれない。しかし最新作のMHWでは、現に英語で彼女を”Guild Receptionist”や"Guild Girl(gal)”と公式では表現していない*7。公式としてもモンスターハンターの次回作か次々回作ぐらいには男性の”The Handler”が登場する可能性も高いだろう*8。だとすると、その「受付嬢」という呼び名は、そろそろ、ささやかなノスタルジーとともにお役御免してもらってもいいのかもしれない。

 

【追記 2021.03.30】2021年3月に『モンスターハンターライズ』が発売された。今回の作品にも受付嬢がいる。ヒノエとミノトという双子姉妹だ。彼女らは英語で何と表現されているかというと以下の画像の通り、"the Quest Maiden"*9だ。"maiden"は基本的に未婚の若い女性を意味するので、正に「受付嬢」というか「クエスト娘」というように表現されていることが分かる。

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格好から考えても「巫女」という雰囲気があるので、その辺りも踏まえた言葉の選択なのかもしれない。

 

*1:このthe handlerのニュアンスについて、分かる方がいたら、ぜひ教えてほしい

*2:なお、受付嬢は固有名としての名前( ベッキーとか)も一応持っている。

*3:女性に対する丁寧な表現ma’amの別スペル。マダムmadamから来ている言葉。MARM | Definition of MARM by Oxford Dictionary on Lexico.com also meaning of MARM

*4:参考ページ受付嬢 (うけつけじょう)とは【ピクシブ百科事典】

*5:参考ページ世界観/龍識船 - モンスターハンター大辞典 Wiki*

*6:MHWより前の作品でいかにも女性的な「かわいさ」が強調されがちだった受付嬢たちも裏設定としてモンスターやその生態に関わる知識についてはエキスパートであるとの説明が一応「言い訳」のようになされてはいた。単なる可愛いだけの女の子じゃないんだぞ、ということだろうと思う。

*7:ただ、ファンメイドの英語モンハンWikiでは、"The Handler”は歴代の「受付嬢」が並ぶGuild Receptionistの項目に分類されている。Guild Receptionist | Monster Hunter Wiki | Fandom

*8:参考ページTIL Male Version Of Handler Existed (In Concept Art) : MonsterHunterしかしこのコンセプトアートにいかにも「男の娘」を想起させるような走り書きがされているのを見ると、いかに受付嬢は女性に固定したいという観念が強いか、逆に伝わってきて色々と考えてしまう。しかし、そんなゲーム業界も地道に変わってきている(と信じている)。

*9:ミノトの方は集会所の受付嬢ということで、"the Hub Maiden"と表現されている。なお(ミノトの方だったと記憶しているが)ミノトは、ランス使いだそうで、単なる受付嬢ではなく、戦う受付嬢ではありそうだ。茶屋の少女ヨモギもヘビーボウガンを担いで戦いに赴くが、このあたりの戦う女性の表現は、いかにも「日本的」という感じがする。