ビデオゲームとイリンクスのほとり

ビデオゲームを中心としたレビュー・コラム記事です。 映画の感想は『映画と映像とテキストと』というブログに書いてます。https://turque-moviereview.hatenablog.com/ Twitter ID: @turqu_boardgame

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『ザ・ワンダフル ワン・オー・ワン リマスタード(The Wonderful 101 : Remastered)』で再びこのゲームの素晴らしさを思い知った

2020年リリース。2013年にWiiUで発売されたこのゲーム。リマスターでSwitch/PS4/Steamに帰ってきた。7年ぶりにプレイしてみて、やはりこのゲームは大傑作だと改めて思った*1。少々長くなってしまったが、下手の横好きを自認するアクションゲーマーにこそ本作を遊んで欲しい。本作はセンスではなく、地道な繰り返しにより確実に楽しくなってくる、ある種のレトロさを持った傑作である。

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熱い演出と硬派なバトル

この作品の魅力は次の2つと言える。

  1. 馬鹿馬鹿しくも熱い物語とその演出
  2. 頭と指で覚えることが多い硬派なバトルシステム

これらの魅力について、既にネット上に似たような感想が多くある。そしてそれは概ね私も同意だ。しかし演出が熱ければそれでいいのか?とか、硬派だからと言って面白いわけではないだろうとも思う。そこでこれら2つについて、個人的になぜ良いのかという点をもう少し解きほぐしていこうと思う。そして、最後に本作の欠点とそれを克服するためのささやかなアドバイスを書いていきたい。

 

熱血ストーリーを効果的に描く

熱い物語演出で思い起こされる他のゲームというと、私の場合『スペースチャンネル5 Part2』や『大神』のラストなどが頭に浮かぶ。しかし『ワンダフル101』はこれらのゲームと少し趣が異なっている。上記の2作品は、どちらかという涙腺が緩むようなウェットな感覚があったが、本作はより「ただ熱いこと」を突き詰めている*2。これは主人公格のワンダ・レッドのキャラクターに依るところも大きいだろう。

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具体的に見てみよう。とりわけ本作の「熱い演出」が素晴らしい箇所として、最初のボス戦(1-C)の演出がある。場面が何度も転換して、ボス戦終盤は高層ビルからの落下をしながらの戦闘、そして最後は敵を綺麗に一刀両断する胸のすくような展開を経る。『ワンダフル101』の演出の魅力はこの1-Cのボス戦に集約されていると言っても過言ではないだろう。そしてネタバレを避けるため詳細は述べないが、それを超えるスケールでラスボス戦は描かれている。

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最初のボス戦(1-C)は、最高に熱い。

 

本作のボス戦はどれも凝っているが、テンポの良さ、危機的状況の畳み掛け、反撃に向かうヒーローの勇ましさが、過剰なほどにエスカレーションしていくのは、この1-Cとラスボス戦の2つが特に際立っている。逆に言うと、それ以外のボス戦はその2つのボス戦に比べると、熱い演出はある程度抑えられているように感じる。この辺りが、本作は「中だるみする」と評価される要因の1つだろう。しかし、ゲームの序盤と終盤に圧倒的な熱量をぶつけることで、最も効果的にこの物語全体の「熱さ」を伝えることに成功している。特にウェットさが比較的薄い本作では、毎回のボス戦をただ「熱さ」一辺倒で演出してしまっては、これだけの強い感動をラストに与えることはできなかっただろう。熱血ストーリーを最大限に効果的に見せることにおいて、本作はかなり練られた作品であり、決して単細胞な作品ではない。

 

馴染みやすさと我慢の戦闘システム

  • 一見、難しそうでありながら馴染みやすい戦闘システム

本作はいわゆる『デビルメイクライ』や『ゴッドオブウォー』などのスラッシュアクションの系譜に連なる。しかし、『ワンダフル101』はピクミンのような群体を操作する点にオリジナリティがある。その群体が集まり、剣や拳や銃などに変形するユナイト・モーフという「強攻撃」が戦闘での主要な攻撃手段だ。

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拳タイプのユナイト・モーフ。近接だが攻撃力が高い。

 

このユナイト・モーフは、『大神』のようにアナログスティックで記号(丸や直線など)を描くことで切り替えることができる。『デビルメイクライ』の武器変更を、『ワンダフル101』では記号を描くことで行うイメージを持ってもらうと分かりやすいだろう。

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丸の記号を描いているので、拳タイプのユナイト・モーフになる。

 

これだけ聞くと「武器変更にいちいちアナログスティックで記号を描くなんて面倒だな」と思うかもしれない。しかしこれがいい具合に、アクションゲームが苦手な人にもゲームを馴染みやすいものにしている。どういうことかというと、この記号を描くときには、ゲーム内の時間進行が極度にスローになるのだ。『ベヨネッタ』では敵の攻撃をタイミングよく避けると「ウィッチ・タイム」という時間がスローになるボーナスタイムが発生するが、『ワンダフル101』ではそのスロー時間を任意に発生させて記号を落ち着いて描けるようになっている。これが一見すると単に面倒くさそうなシステムの一つの受け入れやすさの土台となっている。非常にスピード感のあるゲームではあるが、極端にスローな時間進行を度々任意に発生させることで、ヒーローの超速スピード能力によって「状況をコントロールできている」気持ちにさせてくれる。

 

また、本作ではコンボに対する評価が非常にユルい。『デビルメイクライ』ではある程度の練習をしないと多彩なコンボを繋げてスタイリッシュな戦闘をすることはできないが、『ワンダフル101』はもっと単純である。武器(ユナイト・モーフ)を巧みに切り替えるか、空中コンボをする、この2つを駆使するだけでかなり見栄えの良い戦闘ができてしまう。また戦闘リザルトでのコンボ評価も『デビルメイクライ』ほどシビアではない。

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戦闘ごとのリザルト評価画面。コンボ評価は比較的、最高評価が取りやすい。

 

本作の戦闘は難しいとよく言われる。これは確かにそうで、とにかく何が悪くて攻撃を食らったのか、どうすれば相手の弱点を突けるのかが、初見では分からないという面が大きいからだろう。本作の欠点についてはまとめて後述するが、こうした難しいというイメージの薄皮の下には、実はかなり馴染みやすく単純に気持ちよくなれるシステムが隠れている。これがある程度分かるようになると途端にこのゲームは楽しくなってくる。

 

  • 地道に避けて耐えることを求める「我慢の戦闘」

さて、ではある程度戦闘システムが分かってきたら、そこからずっと楽しさが伸びていくかというともう一点、本作には壁がある。それが「我慢」の要素だ。本作は様々な種類の武器(ユナイト・モーフ)が存在しており、敵もまたかなり多彩に存在している。そのため、特定の敵には、劇的に効果があるような武器(ユナイト・モーフ)が何かあるに違いないと考えてしまいがちだ。たしかにそういう武器の相性というのはある。しかし、多くの場合、地道に敵の攻撃を避けていき、特定のタイミングを待った上で、ようやくこちらが攻撃を叩き込む瞬間が訪れる。だから、うまく武器を切り替えるだけで、戦闘が格段に有利になるとは限らない。これが一番顕著に現れるのが、プリンス・ヴォークンとの戦闘である。

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中盤以降、何回か戦うことになるライバル的存在の敵であるが、この戦闘が最初は非常に難しい。プリンス・ヴォークンは主人公たちと同じ多彩な武器(ユナイト・モーフ)を使ってくる。そして、相手の特定の武器に対して、こちらも何か特定の武器で向かい撃てば上手く反撃できるのではないかと考えたくなる。しかしヴォークンのほとんどの攻撃には有効な反撃手段が存在せず、地道に避けていくことが求められる。そしてわずかなタイミングにこちらが攻撃を叩き込むチャンスがある。つまり比較的「我慢の戦闘」なのだ*3

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プリンス・ヴォークン戦は慣れるまでが難しい。

 

こうした「我慢の戦闘」は、ゲーム後半に度々出てくることになる。とにかく上手く避け続けて、攻撃を叩き込むチャンスを伺うというスタイルは、ド派手で熱いストーリーの本作のイメージからは少し遠い。そのため、ついつい華麗な攻略法があるものと考えたくなるが、その答えは見つからない。そうした「無い答えを探してしまいがち」という側面が本作の難しさとして認識されている面はあるだろう。しかし答えを探すのを止めてこの地道な「我慢」のプレイに慣れてくると、これがかなり楽しくなってくる。この楽しさが分かると、『ワンダフル101』は無類に遊びやすくて、気持ちのいいスラッシュアクションの傑作になる。

 

分かりやすい欠点の数々

では、最後に本作の欠点をいくつか挙げていきたい。私は『ワンダフル101』を大傑作のアクションゲームだと思っているが、それでもやはり多くの欠点があることは認めないわけにはいかない。特に『ワンダフル101』の欠点が特徴的なのは、「指摘が容易」で「目につきやすい」という点だと考えている。 

 

  • カメラワークが悪い

これは多くの人が指摘する。本作は斜め上視点からのカメラ固定のゲームのため、カメラは自由に動かせない。そのため余計にカメラワークの悪さが目立ってしまうようなところがある。特に主人公たちにカメラが寄って拡大された時には、ストレスを感じることが多い。とりわけ狭い空間に入った時にはこのストレスを強く感じる。WiiUの2画面を活用しようとした面はあるのだろうが、やはり操作のやりづらさは否めないだろう*4。しかし実際は慣れてくると、ほとんどのカメラワークはプレイに影響が出ないものだと理解できる。

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狭い空間でのカメラワーク。キャラクターオブジェクトが多く、カメラもキャラに近いため、周りの状況が視認しにくい。

 

  • 画面内で何が起こっているのか分かりづらい

これは群体を操作するというコンセプトによる欠点である。100人近い小さなキャラクターがウジャウジャといる中で、敵の攻撃を見極めないといけない。どうしても「画面がうるさい」感じにはなる。敵の攻撃の予備動作をちゃんと認識していないと、訳もわからずダメージを喰らうことになるが、最初はそれがなかなか認識できない。なにより、大型の敵が2体以上出現したときには、極端に難易度が跳ね上がる。『デビルメイクライ5』では、画面外にいる敵は攻撃してこない親切な仕様だが、『ワンダフル101』では画面外の敵も容赦なく攻撃してくる。このあたりの難易度曲線の傾きの大きさは、初回プレイではかなり厳しいものがあるだろう。

 

  • リトライのチェックポイントが分かりづらい
  • ボス戦はチェックポイントがなく、長い
  • ボス戦での変身シーンがスキップできない

ベヨネッタ』などで、細かなミッションごとに戦闘リザルトが表示されるシステムが『ワンダフル101』でも採用されている。この戦闘リザルトの評価を良くするため、敵から攻撃を一回でも喰らったらやり直しのためリトライするプレイスタイルを取る人もいるだろう。そうした時に、どこまで戻されるのか?が分かりづらい。大抵は、前回のリザルト評価後まで戻されるのだが、中には2回前のリザルト評価まで戻される場合がある。いつがチェックポイントになっているのかが非常に分かりづらいのだ。

 

また『デビルメイクライ5』などはストレスなくプレイすることが配慮され、リトライしてもあまり前まで戻されない仕組みとなっている。しかし『ワンダフル101』の、特にボス戦について言えば、一切チェックポイントがなく、リトライすると完全にボス戦の最初まで戻されてしまう。加えて、全てのボス戦では「アンリミテッド・フォーム」という特別なモードへの変身シーンが必ずあるのだが、このカットシーンはスキップができない*5

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スキップできない変身シーン。

 

他のカットシーンはスキップできるのに、この変身シーンだけはスキップできないのは製作者の傲慢(笑)とも思える。なにより、せっかく何度もリトライしようという『ワンダフル101』にとっては優良な顧客の心を、わざわざ折る必要はないのではないか。あえてそれをスキップさせない演出というのも分かるが(分かるが)、まあ、端的に言って欠点だと言われても仕方がないだろう。

 

  • 何をすれば良いの分かりにくいギミックがある

時折、何をすればゲームが進むのか全く分からない場面がある。大抵は銃で何かを撃つか、剣で何かを切るか、ネジを回すか、爪で壁を登るか、銃で何かを撃てば*6解決するのだが、それがとても分かりにくい。しかも、これ、実際に遭遇すると異常にイライラする。初見の人にアドバイスするとすれば「分からなかったらネットを検索せよ」と言いたい。それに悩むことは、この作品の楽しさとほぼ無関係である。

 

  • 無限コンティニューで「その場復活」できてしまう

本作はコンティニューに制限やコストがなく、またコンティニューした場合に死亡地点でその場で体力全回復で復活する。そのため、クリアだけするなら、非常に簡単なゲームとなっている。これは最後までプレイさせるという意味では良いのだろうが、多くのプレイヤーがゲーム後半ではコンティニューの連続で進めてしまい*7、本作の面白さを十分に味わうことなくエンディングを迎えたプレイヤーが多かったのではないかと思う。

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コンティニューする度に右下のドクロマークが増えていく。その不快さ以外にコンティニューにコストはない。

 

しかし本作の楽しさは演出やストーリーだけにあるのではない。プレイスキルの習得こそが何よりこのゲームの面白さであるのならば、コンティニューは「その場復活」でなくチェックポイントまで戻される仕様が採用されるべきであったと思う。この「その場復活」の仕様のために、本作が単なる「熱血バカのストーリー」としか理解されていないとしたら、それはそれで不幸であるような気がする。いや、これはこのゲームを愛するがゆえの欲目かもしれないが、やはり、もったいないと思ってしまう。

 

欠点を補ってあまりある面白さ

しかし、そうした分かりやすい欠点は、すべてプレイスキルを得ることによって、許すことができるようになる。それくらい、本作はアクションゲームとしての楽しさ、そしてあえて言うが「敷居の低さ」を持っているゲームである。『デビルメイクライ5』で、下手の横好きアクションゲーマーであることを自覚するような人にこそ、本作を遊んでほしい。ひとつだけ、このゲームの真の面白さを理解するためにアドバイスできることがあるとすると「ノーコンティニューを目指してプレイした方が良い」ということだ。人によってその縛りは多少幅があっても良いだろう。例えば、2回までコンティニューしていいとか、一撃死のあるパートだけはコンティニューありでOK、とか。ともあれ「基本ノーコンティニュー」を目指すことで本作は何倍も面白くなる。

『ワンダフル101』は、スタイリッシュにダンテやネロを扱えないプレイヤーにこそ、優しく微笑みかけてくれる大傑作のアクションゲームである。

 

*1:米ゲームメディアのGameSpotは4点という低評価を付けているが、私としては大傑作の9点は与えられる作品だと思っている。GameSpot評は決して間違ったことを書いているわけではないが、このゲームの「気持ちよさ」について認識しているようには思えない。メカニクスの複雑さから「戦術的」な戦闘システムだと評しているが、むしろ「快感」に寄りそった調整だと私は考える。ただ、見た目から機能が判別しにくい点などへの指摘はその通りであると思う。The Wonderful 101 Remastered Review - Mob Mentality - GameSpot

*2:ルカにまつわるエピソードがややウェットではあるのだが、あまりそれで泣かそうという気は『大神』などと比較すると小さいと考える

*3:こちらもスキルなどを多く習得してくると、ヴォークンとの戦闘も単に「我慢」の戦闘ではなくなるのだが、ここでは初回プレイを想定して「我慢の戦闘」と表現している

*4:通常は斜め上からの俯瞰視点だが、狭い空間に入るとWiiUゲームパッドのサブ画面にTPS視点で主人公たちが映る。普段とは異なる視点への変更をWiiUゲームパッドのサブ画面を使うことで行っていた。

*5:少なくともv1.0.1ではアンリミテッド・フォームへの変身シーンは一切スキップできない

*6:大切なことなので2回言う。ゲームが進まなくなったら、とにかく「銃で何かを撃て。一回撃って諦めるのではなく何度か撃て。」

*7:なにより、本作はボリュームが多い。体感的には『デビルメイクライ5』の1.6倍くらいのボリュームがある印象。そのため、コンティニューだけで最後まで進めてしまった人は、後半がやや作業的に感じてしまったのではないかと思う。しかし後半もそれぞれにオリジナリティがある戦闘で、それぞれに用意されているコツを掴む面白さがある。