ビデオゲームとイリンクスのほとり

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スマブラの「新ファイター参戦ムービーへの海外の反応」はなぜ泣けるのか?

なんか泣けないですか?そうでもないですか。すみません。いや、もちろん泣けない人もいると思いますが、ついつい泣いちゃうって人も多いと思うんですよね。

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スマブラに新ファイターが登場する。これだけで一つニュースになる。そして、思いもよらぬ、いやどこかで分かっていたあのキャラクターが参戦する。参戦ムービーの興奮もさることながら、それに興奮しているYouTuberなどの雄叫びや歓喜の声になぜか無性に感動してしまう。ちなみにわたしはSwitchのスマブラは買っていますが、20時間ぐらい遊んで放置しています。今は全く起動していません。そんな不真面目なファンなのに、泣いてしまいます。ちなみに「スマブラの新キャラ参戦ムービーへの反応」というのは次のリンクにあるような動画です。

Everybody React to Super Smash Bros Ultimate Minecraft Steve Reveal Trailer (MASHUP) - YouTube

 

これ見て泣いてるって微妙にキショイなと思いつつもやっぱり泣いてしまう。「キショイな」と思うのは、これが2013年の東京オリンピックの招致決定をみんなが歓喜する、あのシーンを思い出してしまうからなんですよね。全くオリンピックに興味がないだけに、外側から見ているととても奇異な感じがする。いや、人が喜んでいることは別に良いことなのです。ただ、喜ばしいニュースそれ自体よりも、そのニュースに喜ぶみんなの様子の方が好き、ってやっぱりどこか不健全な感じがするわけです。いや健全すぎて嫌な感じがするのかもしれないですが。

 

あと、海外の人たちの反応が特に喜ばれている点も面白い。2004年のE3で宮本茂がハイリアの盾とマスターソードを持ってゼルダ新作を発表した時のあの怒涛の歓喜の反応。これが自分的には「反応を楽しむ」の原点だなぁと思う。その当時のE3の興奮した様子は以下のリンクから。

One Of The Best E3 Reactions - Zelda Twilight Princess Reveal 2004 - YouTube

 

この時、日本の開発者が海外の人たちを喜ばせたことの成功体験というか、喜ばしさ、誇らしさ、みたいなものをずっと後追いしてるような感覚がある。仮にエルダースクロール新作やGTA新作の発表で凄い歓喜が沸き起こっても、日本人はそんなに嬉しくなったりしなそうな気もする。いやどうなのかな。もちろん海外の実況者たちの方がリアクションが大きいというのもあると思いますし、別に日本人向けでなくReaction動画がまとめられているので、英語圏の人たちも自ら楽しむことはあるのだと思います。

 

また『マインクラフト』のスティーブは今やマイクロソフトの持ち物なので、ハード戦争の垣根を超えた的な嬉しさもある。他社のキャラクターが参戦するのは既に2008年のスネークやソニック参戦以来の伝統なので、もはや驚きはないですが、それでもやはりユーザーであるわたしたちが大切にされているような気持ちを抱くきっかけにはなる。ゲームハードナショナリズムの乗り越えですね。

 

あと、スマブラというのは常にノスタルジーを燃料にしているという面も大きいだろうと思います。参戦ムービーでやはり盛り上がるのはかつてのヒーローの再登場。新作のキャラが登場してもそこまで嬉しくならない。そういう意味で『マインクラフト』のスティーブとかは既に「古典」に類するような存在なのでしょう*1。マイクラの正式版リリースが2011年なので、もはや10年選手なんですよね。ノスタルジーということは、既に失われたものを取り返すような喜びでもあったりして、それはやはり涙を伴う喜びでもあると思います。とは言え、涙腺の緩み始めた世代、泣けるというのは、そういう世代の問題かもしれません。若い人はあまり泣かないような気もします。分かりませんが。

 

あとこれは本当に個人的な感覚なんですけど、ネットでは「嘘でないこと」ってのが凄く大切にされてるという印象がある。こんな嘘とフェイクに塗れたネットだからこそなのか、にも関わらずなのか、そこは不思議なんだけど「正直であること」に妙に高い価値がある。もちろんテレビだって新聞だって嘘は嫌われるんですけど、そういう既存メディアの「作りもの感」が嫌われ、ホンネっぽさが大事にされる。ネットの出現によって、テレビが予定調和で嘘っぽいモノとして扱われてる感覚が強まった。その点この「海外の反応」みたいなものって、「嘘のないもの」「ホンネ」が仮託されている。クリスマスで子供たちがプレゼントを開けて、顔がパァ〜っと明るくなる、みたいなのと同じ。なんか「遠慮なく信じられる本当のキモチ」として救いになっているのかなと思います*2

 

スマブラというのは、元々お祭り的なソフトで、こうしたイベント発生装置となっていることは宿命だとも思います。ただ、とても流行スピードの早い世界。「スマブラの参戦ムービーも、かつての勢いは無くなったな」なんて言われることも今後あるのかもしれない。だとするととても寂しい気持ちがします。一方で10年後も20年後も同じような役割をスマブラが担っているとしたら、それはそれで若干気持ち悪いような気もします。

 

 

*1:新ファイターの参戦でなかったですが、『アンダーテイル』のSansの登場は独特の喜びがあったのかもしれないです。『アンダーテイル』自体がノスタルジーを誘うようなところがありつつも、作品としては比較的新しい。大作ゲームキャラ山盛りの中に、インディーゲームが参入したという、そういう垣根を超えた感じが嬉しかったのかもしれない。

*2:だからこそ、近い将来「YouTuberの反応ってワザとらしいよね」みたいなことにもなってしまうかもしれません。感情の消費スピードというのは早そうですし。